女性監督の魅力

 猛暑の中、時間を見つけては試写通いしています。映画を見る前は、頭の中を白紙にしておきたいので、情報は見ないようにしていますが、見終わった後、「うまいな」と感じる作品は女性監督の場合が多いですね。
 たとえばデンマークスサンネ・ビア監督。この人は2007年アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた「アフター・ウェディング」で知られていますが、彼女の「ある愛の風景」を見て、思わずビビッと来ました。(笑)出来の良い長男と結婚して子供も二人いるサラ。夫のエリート兵士、ミカエルはアフガニスタンへの駐留が命じられます。(それにしても最近の優れた女性映画は、戦場や紛争地を果敢に取り上げる傾向が強いですね)そしてミカエルはアルカイダに捕らえられ、同じように捕まった自国の兵士を殺すように命じられます。同僚を殺すか、自分が殺されるかの中で、ミカエルは生き残る道を選びます。死んだと思い、葬儀まで出したサラの前に、虚脱した夫が姿を現します。この映画の基本路線は家庭メロドラマですが、ミカエルには、定職もなく刑務所暮らしをするような、家族の厄介者のヤニックという弟がいます。出来の良い兄と、何をやっても駄目な弟というのはエリア・カザンジェームズ・ディーンをスターにした「エデンの東」の場合もそうです。ミカエルがいなくなって、サラや家族たちを支えたのはヤニックでもあったのですが、ミカエルはサラとヤニックの仲を疑います。そしてミカエルを支えてきた堅牢で幸せな世界が次々と瓦解してゆきます。
 スサンネ・ビアのすごさは、戦場の過酷さと日常的な生活という、これまでだとどちらかの世界に傾きがちな世界をたぐいまれな演出力で見せ、凡百の家庭メロドラマの域を超えていることでしょう。そして現代という時代に対する批判。映画というものは、時代を感じ取るセンスがとても必要と感じます。 
 後期には「映像文化とジェンダー」の授業が始まります。紹介したい女性監督が増えたので、後期は大変、楽しみです。
 また、文化庁映像スタッフ育成事業に参加した木場真理子さんの汗と涙と感動のインターンシップ体験も城西国際大学メディア学部のWebに載っていますので、あわせて読んでください。