東京フィルメックス映画祭

東京フィルメックス映画祭が終了しました。オープニングはブラジル映画「リーニャ・ヂ・パッシ」。これは「日本でも公開されたチェ・ゲバラの青春時代を描いた「モーターサイクル・ダイアリーズ」のウォルター・サイレス監督と女性監督ダニエラ・トマスさんの共同作品です。それに監督特集は蔵原惟繕。久しぶりに川地民夫主演の「狂熱の季節」を見ました。日本が高度成長をはじめる1960年の作品で、邦画はジャズとセックスとギンギラギンの太陽をぶつけていた頃の話題になった作品です。                                    


 ゴダールの「勝手にしやがれ」を超えるなどという批評もありましたが、今、見直すと、何とも荒っぽい映画で、それにもまして、この映画の女性像が、理解不能なほど可笑しくて、グロテスクでした。でも、この時代の感覚がわかるものですから、複雑な気分に陥りました。

 
 この映画祭のディレクターは、林加奈子さんがやっています。ベルリン国際映画祭モントリオール国際映画祭、サン・ファン国際映画祭と、いろいろな映画祭をご一緒しました。この欄でも紹介した川喜多かしこさんの秘書のような存在で、さまざまな映画祭に川喜多かしこさんの名代として国際的な映画人脈を作り、独立してからは、新しい人脈を作っている若くて頼もしい映画人です。


 東京国際映画祭は、各映画会社の持ち寄りというイメージが強いのですが、やはり優れた国際的なディレクターの辣腕が必要とされるでしょう。

 たまたま国際基金賞を受賞したマルコ・ミューラーさんが来日して、そんな意見が蓮見重彦先生などから発せられたようです。ミューラーさんは、この欄でも紹介したロカルノ国際映画祭のデビッド・シュトライフさんの後任として活躍を始めました。ロカルノの後は、ヴェネチア国際映画祭のディレクターとして、辣腕ぶりを発揮してきました。ミューラーさんは中国語も出来るアジア映画通ですが、北野武監督をヴェネチアで国際的にアピールさせた恩人でもあります。

 ニューヨーク映画祭のディレクター、リチャード・ペーニャさんも成瀬巳喜男の研究家であり、国際交流基金で日本にも滞在してました。そんなことを考えると、日本やアジアも理解している国際映画人をスカウトすべきというのが、東京国際映画祭の価値を高める方法ではないかと思うのです。


 東京フィルメックスは、そういう目配りが出来る映画祭で、規模は小さいのですが、新しい映画人も含めて、着々と新しい国際ネットワークを作り上げているのには、毎回、感心してます。