2006年のベストテン

 キネマ旬報の2006年ベストテンが発表された。こちらは投票していないので、気楽に選者と選ばれた作品表を眺めているが、これが結構、楽しい。選者の評価する監督としては、圧倒的にクリント・イーストウッドだ。外国映画ベストワンが「父親たちの星条旗」、次が「硫黄島からの手紙」。イーストウッドの長い生涯を考えると、底力というか、映画人としての誇りのようなものがうかがえた。3位がポン・ジュノの「グエムル 漢河の怪物」、その後はアン・リーの「ブロークバック・マウンテン」、ケン・ローチの「麦の穂をゆらす風」、アレクサンドル・ソクーロフ「太陽」、ベット・ミラーの「カポーティ」、ジョージ・クルーニィの「グッドナイト&グッドラック」などが上がっている。妥当なところで嬉しくなった。ベストテンの順位をつけるのは難しい。残念なのはミヒャエル・ハネケの「隠された記憶」をベストワンに上げているのは、河原晶子さんだけ。ハネケは期待する監督だし、この作品もすごく良かったのに!
 「硫黄島からの手紙」、「太陽」、それに「力道山」など外国監督が日本を舞台にした映画を作るようになった。それはそれでいいことなのだが、タブーとされてきた昭和天皇をロシアのソクーロフが描いて、公開されたという事実は、重い。アメリカも上位作品は、第二次世界大戦赤狩り事件だ。湾岸戦争を描いた「ジャーヘッド」は、ようやくアメリカの現実に迫った作品が出てきたなと思うが、さまざまな立場から描かれたヴェトナム戦争映画に比べれば、映画の力は弱くなったと思う。この辺にもハリウッドの力の衰えを感じた。現代を描いたアメリカのすごい映画を見たいものである。
 その点、ポン・ジュノの「グエムル」のとてつもないすごさは、韓国映画が今後、まだすごいものを生み出す力をもっていることを示したのではないか。今年、一番圧倒されたのが、この作品である。