川喜多かしこ生誕百年

メディア学部のニュースに紹介しておいたように幕張で開かれた「アジア海洋映画祭」に顔を出してきました。また、10月18日からは東京国際映画祭六本木ヒルズで始まります。

 今年のプログラムはすでに発表されましたが、私が最も興味を持っているのは、韓国の故キム・ギヨン監督の回顧上映です。

 何年か前に、日本で始めての上映でお会いしましたが、作品の迫力に圧倒され、キム・ギヨンを学生たちと見たいと思いました。

 ようやく、この怪物への関心がカンヌあたりでも広がったのはうれしい限りです。

 ところで、京橋フィルム・センターで開かれていた川喜多かしこ生誕100年「川喜多かしこヨーロッパ映画の黄金時代」が終わりました。戦前から東和映画の副社長として、夫の川喜多長政さんともども、すばらしい作品を日本に紹介してきた映画人です。東和映画を通じて、ヨーロッパを発見した日本人はとても多かったはずです。

 私は「映画愛 アンリ・ラングロアとシネマテーク・フランセーズ」(リブロポート)を訳した時に、川喜多かしこさんに推薦文を書いていただきました。川喜多かしこさんの仕事は、これまで国際映画交流の場において、すばらしいお仕事をされながら、一般的には黒子的な存在として、あまり表立って語られることはなかった気がします。国際映画祭や国際映画交流がクローズ・アップされるにつれ、こういう形で公に知られるようになったことは、大変、すばらしいことだと思います。



 実はこの「映画愛」の著者、リチャード・ラウドさんもカンヌ映画祭の著名人でした。フランス語と英語を駆使して、カンヌ映画祭のコンペテション部門の司会者でした。殿上人?みたいにあおぎみていましたが、ニューヨーク映画祭に通うようになって、アメリカに紹介されなかったアジア映画やアフリカ映画などを紹介した実力派ディレクターであり、映画辞典やフランスのヌーヴェルバーグの研究者であり、「映画愛」の本の中で語られているように、アーカイヴの仕事をしてきた国際的な映画人であることを知りました。「映画愛」の翻訳を通じて、個人的にもお話をするようになりましたが、ラウドさんからも国際映画祭の意味を教わりました。
 

 来年度から「国際映画祭」という講義を持つので、さまざまな角度から国際映画祭から育った人脈も含めて紹介したいと思います。